!ネタバレ注意です!END14(真相エンド)クリア後の閲覧を推奨します

END14

想像の余地が残るように……とあえて説明を最小限にとどめてみたのですが、改めて見返してみると、さすがに言葉が足らな過ぎたかもな~と感じたので、真相エンドについて、ほんのちょっとだけ解説していきます。

END14の後、サウィン祭の儀式はどうなったのか? エリン(弟)はどうやって「イケニエ」を回避したのか?……という部分についての補足です。

作中のキャラがだれも触れていないためわかりにくくなっているのですが、エリン(妹)が剣に宝石を使ったあと、が降りはじめています。まだサウィン祭ははじまっていませんし、エリン(妹)は火あぶりにされていないのに、あれれおかしいぞ~?ということですね。

ちなみに、そのあとのエリン(妹)の語り(儀式から少なくとも数日後?)の時点でも、また(まだ)雨が降っています。

オープニングを見返してみると、「人間をイケニエにする」という祭司の提案に対して、村人たちは驚きと不安で返しており、最初から乗り気だったわけではないんですね。 それがなぜ決行することになったかというと、

雨を降らせるためでした。

サウィン祭でエリン(妹)を焼けば日照りが終わると言われたからですね。それが「イケニエ」の儀式の直前に雨が降ってしまったので、儀式は仕切り直しに……ということになりました。どのみち祭壇は雨が当たる場所にあるので、雨がやまないかぎり、火あぶりは難しいです。村人たちは久しぶりの雨に大喜びだったと思います。仕切り直しになった儀式ですが、END14の後、エリン(妹)が集落の様子を見に来た時点ではまだ決行されていません。

ここから先は蛇足になるので多くは語りませんが、

的確に未来を予測できるという触れ込みだったドルイド<祭司>は、儀式の前に雨が降ってしまったことで面目が丸つぶれになり、村人たちの不興を買ったので、

この人は看過しないと思います。

END14の補足ここまででした! ご清聴ありがとうございました♡


制作のきっかけと流れ

うっかり勢いでオンラインイベントへのサークル参加を申し込んでしまったので「なにか出展物を用意しないとな~……あ、てかもうすぐハロウィンじゃん。それじゃハロウィン合わせで短編を作ってみよう!」と軽いノリで作り始めました。ここが地獄の入り口だったとは当初は知る由もなかったのだ。もともとケルト神話や伝承(お気に入りの書籍たちは後述します)が大好きで、いつかは妖精がいっぱい出てくるダークでケルティック全開な民族ゲーを作りたいな~と思っていたので、ちょっと真剣にネタを出してみることに。

8月の終わりごろにネタ出しをはじめ、ノートに片っ端から思いついたアイデアを書き出していった結果、よさそうだな~と思ったのが下記の3つでした。

① 火あぶり回避探索ゲーム(採用案)
② 妖精育成シミュレーション(わけのわからない言葉を話す黒いモヤモヤした生き物?に言葉をかけたりアイテムを与えたりして育成するゲーム。人間の子供みたいなかわいい姿になるエンドとおぞましい化け物になって主人公が食われたり身内が自害したりするエンドがある)
③ 人狼系?の謎解き+探索ゲーム(村人の自分への疑惑度を下げつつ村人を処刑するゲーム。疑惑がマックスになると追放or処刑エンドでゲームオーバー)

ちなみにこの時点で、なんとなくですが主人公は暗い雰囲気の女の子(周囲には人間と思われているけど本当は妖精)で、舞台は「古代ケルト風の世界観をもつ閉鎖的な村」というのはもう決まっていました。あとは、主人公の身内の兄か弟(シャノンの原型)と、祈禱所の巫女の美少女(フィオナの原型)は登場させようと思っていました(この時点では名前はまだ未定でしたが)。ダークな雰囲気を出すなら、生きるか死ぬかみたいなバイオレンス要素はあったほうがおもしろいよなあと思ったので、R15で作ることを決めたのもこのあたりです。

結局①を採用しましたが、②の話も一部①に統合して使いました。妖精の設定が怖かったりエリン(弟)が目玉の姿だったりするのはこの②の名残です。身内が自害したりするエンドというのは、主人公のきょうだいが、主人公が化け物を部屋に隠して育てていたことの責任をとって、井戸に身を投げるエンドです。この案の「きょうだい」はシャノンとはだいぶ性格が異なっていて、責任感の強いまっすぐ系だったんですね。口調も、シャノンよりエリン(弟)のほうに近い感じの設定でした。「井戸に身を投げる」ネタも、「命の覚書」として、形を変えて採用しました。身内が自害するエンドもじつは制作途中までは存在しました(詳細は後述のボツネタの項に書きます)。③はおもしろそうやな!と思ったんですが、よく考えたら人狼って私一度もやったことねえな……と気がついたので断念しました。村人の数を少なくしたとしても、制作期間2か月ではバグ修正が追いつかなそうな自由度になる気配がヒシヒシ伝わってきたしね……。


コンセプト

「正解も不正解もない」がコンセプトです。ついでにこのゲーム内の世界においては、善悪の価値判断がはっきりしていません。人間も妖精も、みんなものすごく自分勝手にふるまっています。現代の倫理観に基づいた価値判断がされない世界、を意識した結果、こんな感じになりました。現実世界とは異なり、人を殺したから悪い……とは一概には言い切れず「プレイした人の価値観次第」というイメージです。制作側としてこれがベスト!という道筋やエンドも決めてはいません。エリン(妹)にとってどのエンドがいちばん幸せ(ベスト)だったのか、シャノンとエリン(妹)はお互いをどう思っているのか、真相エンドの後シャノンとエリン(弟)は平穏に暮らすことができたのか、けっきょく(仮に善悪を決めるとしたら)誰がいちばん悪いのか、すべてはプレイヤーさんそれぞれの判断に委ねられたらいいなあと思っております。

シャノンのエリン(妹)に対する感情についてだけ補足しておくと、愛憎は表裏一体で紙一重、だと私は考えています。シャノンの台詞には幅を持たせてありますので、自由に解釈していただければと思います。シャノンからエリン(妹)に対して愛情があると解釈した方のゲームデータのシャノンにはきっと愛情がありますし、めちゃくちゃ憎まれている……と解釈した方のゲームデータのシャノンには強い憎しみがあると思います。と、そういう感じのコンセプトです。


タイトルの由来

古代ケルト世界で丘や巨石遺跡を意味する単語「シー(sidh)」とそこから派生した「妖精」を意味する単語 「シー(”Sídhe, Sidh, Sith, Shee”)」の両方にちなんでつけました。ゲーム内のエンドで「洞窟集落『シイ』に妖精がいると言われるようになったため「シイ」という言葉は妖精を意味するようになった」……とエリン(妹)が語っていますが、この部分は史実としてのゲール語の変遷(丘や巨石遺跡を意味する単語「シー(sidh)」が最初にあり、そこに「妖精」が棲んでいるとされたことから「シー」という言葉が「妖精」を意味するようになった)と同じ流れを再現しようと試みた、いわばオマージュのような部分です。

ちなみに「シー」ではなく「シイ」の表記にしたのは、日本語の「恣意」との掛け言葉です。あとはもちろん「死」のニュアンスも含めようとしています。


ボツネタ

~タイトル編~

・『シイの墓守妖精』いきなりネタバレは草 ボツ
・『キルネイラの墓守』『キルダラの墓守』好きだったけど「シイ」を使いたいのでボツ
・「タイトル画面を墓石の画像にして、起動するたびに墓石が少しずつずれて中身が見えるようになる」ホラゲか?ボツ

~エンド編~

・「祭司懐柔エンド」祭司にお金を渡したり選択肢で好感度を上げたりする。実装までいったが、作業感がつよくて真剣にダルかったのでボツ
・「シャノン自殺エンド」モイラを殺したところをシャノンに見つかり、家族を全員失ったことに気づいたシャノンが突発的に自殺するエンド。迷ったけど、絶望がキツすぎて逆に世界観にそぐわない気がしたのでボツ
・「りんご酢に毒を入れるエンド」乾杯で全滅に成功する。リアンノンの側近として神殿に登用される出世エンド。これはなぜボツにしたのか忘れた。入れてもよかったかもしれない
・「ほかの村人をイケニエに指名するエンド」制作側としてもプレイ側としても短編では終われない分岐量(21人分?)になりそうだったのでボツ
・「シイの焔を消すエンド」魔法の炎なんでどうやっても消せないというネタ ボツ
・「シイの焔で村を焼くエンド」シイの焔で村を焼いて浄化したかったのですが、岩壁が多すぎて燃え広がらなそうだなと思ったのでボツ


裏設定語り

本編には出していない裏設定たちを一部放出します。

~集落『シイ』について~

人口15人の超小規模集落。とは言っても、『シイ』の周辺には他の集落も点在しており、集落間の婚姻や人の移動もそこそこあります。もともとは政治的に立場を失った人や、他に行き場のない人が逃げ延びてきた場所で、いまいる人たちはその子孫です。洞窟の地下に集落があったり、すぐそばに呪われた泉があったりと、あまり環境がよくない土地にあるのはそれが一因です。

~キャラクターについて~

集落の平均寿命は50歳くらいです。モイラやお爺さんたちもだいたい55歳くらいイメージでした。最年少子どもたち(キーヴァンとクリーナー)は8歳です。成人年齢は15歳です。あと、優しいおにいちゃんのプロフィール設定のせておきますね↓

シャノン:17歳。エリン(弟)は16歳で、ふたりは年子です。
好きなものは料理、嫌いなものは川。シャノンの家は代々墓守をやっているため、共同墓地の入り口すぐ前に住居を構えています。モイラ(祖母)も若かりし頃は墓堀りをやっていました。シャノンが墓堀りをしていないのは、べつにニートだからではなく、モイラの世話をしているためです。エリン(妹)は家事が壊滅的なため、シャノンが炊事から洗濯までの家事をやり、エリン(妹)が墓守の仕事をする、という風に役割分担しています。

ちなみに、シャノンは、エリン(妹)のことを絶対に「エリン」と呼びません。というわけで……

OPのここのセリフ↓は
「エリン(弟)」は大切な家族だったので、(仇である偽エリンを)「イケニエ」に選んでくださって~、

……という意味でした。はい。

シャノンのセリフは2周目からが本番です。


お気に入りの書籍たち

前述のとおり、本作は「中世ヨーロッパ風」ではなく「古代ケルト世界風」となっております。このゲームをきっかけに、ケルトの神話や伝承に興味を持たれた方がいらっしゃったらとても嬉しいな~!という気持ちで布教しておきます。

The Celtic Twilight: Faerie and Folklore

ケルトの薄明(↑の邦訳版)

ケルト妖精物語

ケルト幻想物語

ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険

ケルトの神話―女神と英雄と妖精と

ケルト文明とローマ帝国

ケルト―生きている神話

(ケルト関連の書籍でおすすめがありましたら、こっそり教えてもらえると嬉しいです。特に妖精系が好きです)


↓↓2022/11/11 追記↓↓

おまけ(あとがきのあとがきとかいう蛇足めいた何か

考察(したい方がもしいらっしゃった場合)用のおまけネタです。作中の固有名詞(キャラクター名、アイテム名、技名など)の大半は、ゲール語(ケルト人の言語)やケルト神話の中に「元ネタ」があります。「キャラクター名 ケルト神話」でグーグル検索をかけると、ちょっとニヤニヤできる……かもしれません。